【廃番モデル図鑑】デイトジャスト Ref.1601——アクリル風防と段差文字盤に宿る、ヴィンテージの魅力

アンティークの時計を眺めるのが好きな人にとって、デイトジャスト Ref.1601は素通りできない型番です。1959年頃から20年以上にわたって作られ、文字盤のバリエーションが驚くほど多く、それでいて「デイトジャスト」という実用時計の顔をしている。この記事では、Ref.1601がどんな時代の何を背負った型番なのかを仕様の面から整理したうえで、当サイトが中古サイトから実際に収集している出品データで「今どんな個体が、いくらで出ているのか」まで踏み込みます。
デイトジャスト Ref.1601とは——20年以上続いた長寿型番
Ref.1601は、現行デイトジャストの祖先にあたる旧世代モデルです。当サイトの型番ファクトシートでは生産年を1959年〜1981年頃としていますが、生産終了年は資料によって1977年とするものも1981年とするものもあり、正確な最終年は確定していません。この記事でも「20年以上続いた」という言い方に留めます。
特徴は3つです。
- 風防(文字盤を覆うガラス部分)がアクリル、つまりプラスチック製
- 製造初期から中期のロットに、文字盤の外周が段差状に落ち込んだ通称「パイ生地文字盤」の個体がある
- 3時位置にデイト表示と、その上に日付を拡大するサイクロップレンズを備える
3つ目は勘違いされやすいところです。サイクロップレンズは現行モデルだけの装備ではなく、Ref.1601の時点ですでに載っています。 違うのは、それがサファイアクリスタルの上にあるか、アクリルの上にあるか。同じ機能でも、傷のつきやすさと経年での見え方がまるで違います。
1965年のCal.1565→Cal.1575——「瞬間日送り」という分かれ目
Ref.1601を選ぶとき、年式で中身が変わるポイントが一つあります。ムーブメント(時計を動かす機械部分)です。
当サイトのファクトシートでは、初期がCal.1565、1965年以降がCal.1575とされています。Cal.1575への切り替えで加わったのが瞬間日送りと、耐衝撃性の向上でした。
瞬間日送りとは、深夜0時ちょうどに日付がパチンと一瞬で切り替わる仕組みのことです。これが無い世代は、日付が夜のあいだに数時間かけてじわじわ動きます。実用上の不都合があるわけではありませんが、深夜に時計を見たときに「日付が中途半端な位置で止まっている」ように見えるのは、この違いによるものです。
| 世代 | ムーブメント | 日付の変わり方 |
|---|---|---|
| 初期 | Cal.1565 | 時間をかけてじわじわ切り替わる |
| 1965年以降 | Cal.1575 | 深夜0時に一瞬で切り替わる |
ただし、ここには注意が必要です。実際の中古出品を見ると、1971年製・1973年製の個体に「Cal.1570」と表記されているものがありました(当サイトが収集した実際の出品タイトルで確認しています)。カタログ上の区分と、店舗が個体を見て書く表記は、必ずしも一致しません。年式で当たりをつけつつ、最後は現物と付属品で確認する。この順番が現実的です。
アクリル風防と段差文字盤——現行モデルとの決定的な違い
同じ「デイトジャスト」という名前でも、Ref.1601と現行モデルでは構造も雰囲気も大きく違います。
| 項目 | Ref.1601(旧世代) | 現行デイトジャスト |
|---|---|---|
| 風防素材 | アクリル(プラスチック) | サファイアクリスタル |
| 耐傷性 | 傷はつきやすいが、研磨で目立たなくできる | 傷がつきにくい |
| 文字盤構造 | 個体により段差状の「パイ生地文字盤」あり | フラットな量産文字盤 |
| サイクロップレンズ | あり(アクリル側に一体成型) | あり(サファイア側に接着) |
| 個体ごとの差 | 年式・文字盤・付属品で大きく変わる | 型番と文字盤でほぼ決まる |
耐傷性や日常の扱いやすさだけを見れば、現行モデルに軍配が上がります。ただ、アクリル風防特有の柔らかい光の反射や、段差文字盤が作る立体的な陰影は、サファイアクリスタル世代には出せない表情です。どちらが優れているかではなく、求めている見え方が違う、という理解が近いはずです。

【実測】2026年9月時点で、Ref.1601はどれくらい市場に出ているのか
ここからが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。
当サイトでは中古・アンティーク時計店の掲載ページを定期的に収集し、型番ごとの出品を記録しています。2026年9月17日時点でRef.1601として記録されていた出品は、3サイト・合計15件でした。
| 収集元 | 件数 | 掲載価格の幅 |
|---|---|---|
| A社 | 7件 | 818,000円〜1,098,000円 |
| B社 | 6件 | 980,000円〜14,800,000円 |
| C社 | 2件 | 709,850円〜929,850円 |
※収集元の店名は伏せ、A社〜C社と表記しています。記事後半に出てくる買取価格の表のA社〜C社とは別の会社です。
いちばん高い1本は、18Kゴールド無垢・マラカイト文字盤の1973年製で14,800,000円。これは明らかに別枠なので除くと、残り14件は709,850円〜1,480,000円の範囲に収まり、平均は約99万円、中央値は約95万円でした。
注目したいのは、この14件がすべて同じ「Ref.1601」だということです。素材がステンレスやコンビの個体だけで見ても、最安と最高で2倍以上の開きがあります。
つまり、「Ref.1601の相場はいくら」という単一の答えは存在しません。 型番は入り口にすぎず、値段を決めているのは年式・文字盤・付属品・状態のほうです。
なお、これは15件という限られた観測です。市場全体の平均ではなく、その日にこの3サイトへ出ていた個体の分布だと受け取ってください。
何が値段を分けているのか——15件の並びから読めること
同じ15件を価格順に並べると、上と下で書かれている情報が違います。
- 上位帯(128万円〜148万円)には、1964年製でクロノメーター証明書とギャランティーが揃った個体や、1967年製のパープルチェンジ文字盤(経年で色味が変化した文字盤)の個体が並んでいました
- 下位帯(71万円〜84万円)には、値下げ表記が付いた個体や、文字盤・インデックスの仕様だけが簡潔に書かれた個体が並んでいました
付属品が揃っていること、文字盤に個性があること。この2つが価格差として見えている、というのが今回の15件から読める傾向です。繰り返しになりますが、15件での話なので、これを一般法則として扱うのは避けてください。
出品タイトルに並ぶ「バー」「リネン」「52番」——表記の読み方
収集した出品タイトルには、初めて見ると意味が分からない言葉が並びます。分類するとこうなります。
| 出品タイトルに出てきた表記の例 | 何についての情報か |
|---|---|
| シルバー/グレー/ホワイト | 文字盤の色 |
| バー/ローマ | インデックス(時字)の形 |
| モザイク/リネン/マラカイト/パープルチェンジ | 文字盤の柄・質感・色味に付けられた通称 |
| バックリー/ワイドボーイ/アルファハンド | 個体の仕様に付けられた通称 |
| オールトリチウム | 夜光素材に関する表記 |
| 52番・31番・24番・8番 | 個体を特定するための番号表記 |
| 1964年製・1971年製 | 製造年 |
トリチウムだけ補足します。これは1990年前後を境にルミノバへ置き換わっていった旧世代の夜光素材です(当サイトのファクトシートでは、1989年登場のエクスプローラーI Ref.14270がちょうどこの切り替わりの過渡期にあたるとしています)。「オールトリチウム」という表記は、その夜光が後年に手を入れられていない状態を指して使われるとされます。
そしてもう一つ、実際に集めてみて分かったことがあります。同じ情報でも、店舗によって書き方がまったく違うということです。今回の15件でも、ある店は「1971年製」と製造年で書き、別の店は「52番」という番号表記を使っていました。どちらか片方しか書かれていないことも多いので、複数店を比較したいときは、足りない情報を店舗に直接尋ねるのが早道になります。
1601・16013・16014、そして16233——型番の系譜
Ref.1601を調べていくと、必ず「16013」「16014」という5桁の型番に行き当たります。いずれも1970年代末以降に登場した、ケース素材のバリエーション違いです。
| 型番 | 桁数 | 素材の組み合わせ |
|---|---|---|
| Ref.1601 | 4桁 | ステンレススチール(コンビの個体も出品に見られます) |
| Ref.16013 | 5桁 | イエローゴールド×ステンレス |
| Ref.16014 | 5桁 | ホワイトゴールドベゼル×ステンレス |
ここで大事なのは、5桁になってもまだアクリル風防だったという点です。当サイトのファクトシートでは、Ref.16013はアクリル風防で、その後継として1988年に登場したRef.16233が、デイトジャストとして初めてサファイアクリスタルとCal.3135を採用したとしています。つまりサファイア化の分かれ目は、桁数ではなく1988年です。

Cal.3135で出てくる用語も、ひとことずつ噛み砕いておきます。
- COSC認定クロノメーター:スイスの公的機関が日差を検査して合格した時計に与えられる認定。精度が一定の範囲に収まることを、メーカー以外の第三者が確かめている、という意味です
- クイックセット日付:リューズの操作だけで日付を単独で送れる機能。これが無い世代は、時針を24時間ぶん回して日付を進める必要があり、止まった時計を合わせ直す手間がかなり違います
- パワーリザーブ約48時間:ゼンマイを巻ききってから止まるまでの稼働時間。48時間なら、金曜の夜に外した時計は月曜の朝には止まっている計算になります
Ref.16014についてはファクトシートが未整備のため、この記事では仕様を断定しません。
デイトジャストというモデルが、60年以上残っている理由
Ref.1601の話をしてきましたが、そもそもデイトジャストというモデル自体に、旧世代も現行も貫いている強さがあります。
- 36mm前後というケースサイズ:スーツの袖口に収まり、手首が細くても太くても収まりが付きやすい大きさです
- ベゼルとブレスレットの組み合わせで表情が変わる:フルーテッドベゼルとジュビリーブレスなら華やかに、スムースベゼルとオイスターブレスなら道具の顔になります
- スポーツモデルほど主張しない:仕事でもプライベートでも浮かない、という一点で選ばれ続けています
- 同じ設計思想が世代を越えて続いている:Ref.1601と現行モデルを並べても、ひと目で同じ家系だと分かります
この「変わらなさ」があるから、60年前の個体を今さら買っても、話が通じる。Ref.1601がヴィンテージ市場で扱われ続けている理由は、希少性よりもここにあると思っています。歴史や現行モデルの選び方はデイトジャスト完全ガイドで詳しく扱っています。
【持っている人へ】査定に出す前に知っておきたい「会社ごとの開き」
手元のRef.1601を手放すか迷っている方に、ひとつ数字をお見せします。
ヴィンテージではなく、あえて現行モデルのデータです。当サイトが2026年9月17日に収集した、デイトジャスト36(Ref.126234・ミントグリーン文字盤・ジュビリーブレスレット)の公開買取参考価格は、3社でこうなっていました。
| 収集元 | 公開されていた買取参考価格 |
|---|---|
| A社 | 2,260,000円 |
| B社 | 1,970,000円 |
| C社 | 1,900,000円 |
※ここでのA社〜C社は買取を行う会社で、記事前半の出品データの表に出てくるA社〜C社とは別の会社です。
差は36万円です。個体差がほとんど無いはずの現行モデルで、これだけ開きます。
年式も文字盤も個体ごとに違うRef.1601なら、開きはさらに大きくなると考えるのが自然です。ヴィンテージの評価は、その店がその型番をどれだけ扱い慣れているかにも左右されます。1社の提示額だけで判断せず、複数の窓口で見てもらってから決めてください。査定そのものは無料で、金額を見てから手放すかどうかを決められる窓口がほとんどです。
【探している人へ】中古で見るべき5つのチェックポイント
これから探す方が、写真と説明文だけで判断しないために確認したい5点です。
- 風防の状態と交換歴:アクリルは研磨で傷を目立たなくできる一方、後年に別素材へ交換されている個体もあります
- 文字盤のオリジナル性:段差のあるパイ生地文字盤かどうか、後年に塗り直された「リダン文字盤」でないか
- ムーブメントの世代:Cal.1565かCal.1575か。前述のとおり出品表記はぶれるので、現物と付属品で確認します
- 付属品:保証書・クロノメーター証明書・純正ブレスレットの有無。今回集めた15件でも、証明書とギャランティーが揃う個体は上位の価格帯に並んでいました
- オーバーホール履歴:直近のメンテナンス時期と、対応した業者の記録が残っているか
日常の手入れの考え方は維持費と日常メンテナンスの完全ガイドにまとめています。アクリル風防は現行モデルとは扱いが違うので、買う前に読んでおくと判断しやすくなります。
Ref.1601が向いている人、現行モデルが向いている人
最後に、判断材料として並べておきます。
| Ref.1601 | 現行デイトジャスト | |
|---|---|---|
| 個体差 | 大きい。同じ型番でも中身が違う | 小さい。型番と文字盤でほぼ決まる |
| 探し方 | 中古・アンティーク店で1本ずつ探す | 正規店で待つか、中古で買う |
| 楽しさの中心 | 出会いと見極め | 選んで、待って、手に入れる |
| 手入れ | アクリル風防の扱いを覚える必要がある | 一般的なメンテナンスで足りる |
| メーカー保証 | 個体と業者による | あり |
「毎日ざくざく使いたい」なら現行モデル、「1本を探す過程ごと楽しみたい」ならRef.1601。そういう分かれ方だと思っています。
よくある質問
Q. Ref.1601はいくらで買えますか。 2026年9月17日時点で当サイトが3サイトから収集した15件では、金無垢の1本を除く14件が約71万円〜148万円でした。ただし15件の観測なので、相場と呼べるほどの母数ではありません。目安として見てください。
Q. アクリル風防は普段使いできますか。 傷はつきやすいです。一方で、研磨で目立たなくできるのがアクリルの特性でもあります。「傷が入ったら終わり」ではない、という点が現行モデルとの一番の違いです。
Q. パイ生地文字盤かどうかは、写真で分かりますか。 外周の段差は光の当たり方で見え方が変わるため、正面から撮った1枚だけでは判断しづらい部分です。角度を変えた写真を求めるか、現物を見て確認するのが確実です。
Q. 他の廃番モデルとも迷っています。 同じ年代の別系統として、二本針のGMTや、手巻きの最終型番があります。廃番モデル図鑑シリーズで扱っているので、読み比べてみてください。
👉 デイトジャスト完全ガイド——歴史・ブレスの違い・相場と世間の評価【初心者向け完全版】ロレックス デイトジャストとは?歴史・ブレスの違い・相場と世間の評価を徹底解説
👉 GMTマスター Ref.1675——なぜ今、二本針のGMTが見直されているのか【廃番モデル図鑑】GMTマスター Ref.1675——なぜ今、二本針のGMTが見直されているのか
👉 オイスターデイト Ref.6694——ロレックス最後の手巻きモデル【廃番モデル図鑑】オイスターデイト Ref.6694——ロレックス最後の手巻きモデルまとめ
- Ref.1601はアクリル風防とパイ生地文字盤が特徴の旧世代デイトジャスト。1965年にCal.1565からCal.1575へ切り替わり、瞬間日送りが加わった
- 2026年9月17日時点の当サイト実測では、金無垢を除く14件が約71万円〜148万円。同じ型番でも2倍以上の開きがあり、単一の相場は存在しない
- 売るときも買うときも、決め手になるのは型番ではなく年式・文字盤・付属品。1社・1件だけで判断しない
まずは、気になっている個体の説明文に「年式」「文字盤」「付属品」の3つが書かれているかを確認するところから始めてみてください。書かれていない項目こそ、聞くべきことです。
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